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世界の巨大恐竜博2006 記念シンポジウム
「恐竜は何を食べたか」 小林快次 胃石を示す

3「恐竜は何を食べたか」 小林快次 氏

  恐竜が植物食だったのか肉食だったのか、現生動物でもその食性を研究するのは難しい。残った骨から研究するのはさらに難しい。(スライド:植物食のサウロロフス、肉食のタルボサウルス写真) 食性をどう研究するのか、歯の形、歯の磨耗、骨格の構造、化学分析(同位体)、一緒に発見された化石、胃の内容物や糞化石がある。では、恐竜の分類の中で肉食・植物食を分けられるか?一般的に獣脚類は肉食、他は、植物食。雑食の恐竜もいる。思ったより食性の進化は複雑。

 真ん中の雑食について話したい。私はオルニトミモサウルス類(ダチョウ恐竜)を専門に研究している。ダチョウに似たプロポーションで、足が速かった。(スライド)これはカナダの標本だが、歯がなく鳥のようなくちばしを持っている。

 ではその食性は?肉、昆虫、水生動物、植物・・・

(スライド:シノオルニトミムス・ドンギ) この研究により食べ物と生活が見えてきた。この標本は2m四方のジャケット(石膏で周りを固めたもの)だが、この中に8体がひしめいている。この現場では私たちのチームが14体見つけた。後でアメリカのチームが入り、12体見つけた。その全ての個体から胃石が見つかっている。現場は泥が堆積した地層だが、その腹部からのみ小石が見つかっている。間違いなく腹中に小石を持っていた。

 現生動物で胃石を持っている動物は、ワニと鳥がいる。ワニは水中に沈むためのおもりに使ったり、空腹を満たすために食べる場合もある。鳥の場合は、カルシウムの補給源とするほか、食べ物の消化を助けるために使う。いわゆる砂肝だが、これは植物食の鳥では筋肉質で大きいが、果実食、肉食となるにつれ小さくなり、肉食の鳥では筋肉質でないただの袋だ。それで、シノオルニトミムス・ドンギの食性を考えると、植物食の鳥以上に植物食だったといえる。

 また、この恐竜は集団生活をしていた。私たちが最低14体、アメリカチームが12体なので、少なくとも20から30個体が一緒に行動していた。集団生活の理由は、植物食で被食動物だったこと、また襲われた際に逃げるためだったろう。

 ほかにカウディプテリクスにも胃石がある。また、ポルトガルの恐竜ロウリンハノサウルスはどう見ても肉食だが、胃石が見つかっている。私はこれからも食性のなぞを追っていきたい。

 中国のシェンゾウサウルスからも胃石が見つかっている。一方、モンゴルや北米の標本からは、胃石が見つかっていない。オルニトミモサウルス類の中でも複雑な食性の進化があったと考えられる。