(質疑応答)
(真鍋)
ありがとうございました。今、所さんが「こんなのは格好悪いよね」とか
「いまいちだよね」というのに僕が答え始めると、言葉のキャッチボール
になってしまって、あと3時間くらいかかってしまうので、ここで所さんに
T-REXに関する質問があるかもしれないし、所さんのような漫画家にど
うしたらなれるかという質問があるかもしれない。
僕は所さんに始めて会った時に、そういう質問をしたんですけど。まず、
所さんに対し何か質問がある方。
(質問者)
フィリップ・カリーは、子供のT-REXがエドモントサウルスのような獲物
を追いかけ、待ち伏せしている親のところに連れて行き、それを親が食
べていたという説を出しているが、どう思いますか。
(所)
そういったことを想像することは、想像の範囲である意味、いろいろな
想像ができるが、本当に果たしてT-REXが親子で連携して狩をしていた
か。可能性はありますが、証拠は無いですね。僕が先ほどの漫画で描い
た一つの説は、確かにT-REXの子供は狩をしていたが、それは転んでも
死なない子供のうちで、小さなT-REXは十分攻撃的であったかもしれな
い、と僕は考えています。
こうして倒された植物食恐竜の獲物を、こういうでかいのが横から出てき
て奪い取ったと僕は考えています。実はライオンが同じ事をよくやります。
チーターやヒョウ、中にはハイエナが捕まえた獲物を分捕ってしまうのです。
ライオンの顎は狩をするのにも十分力強いですが、強盗をするにも十分
使えるので、今言ったように親子で狩をしたとも考えられますが、僕は野
生の世界というのはもっと夢を持っていなくて、もと厳しい世界じゃないか
と思っているので、子供が捕まえたものを親の年齢のものが分捕ったの
でないかと考えています。
(真鍋)
ありがとうございました。行動はなかなか化石に残らないので、状況証
拠からどう考えるかということなんですね。その辺のところを所さんは漫
画に表現することが出来るし、こんな可能性はどうだろうというのを、どん
どん話し合っていって、僕みたいな研究者はそれをどうするかというと、
どれが一番科学的に確からしい仮説になりうるのか、それを例えば今、
所さんがライオンとハイエナの例えがT-REXにあてはまるのか、本当に
ハイエナはこういう事をしているのか、ライオンはこういう事をしているの
か、そこまで立ち返っていかなくてはいけない。
というところで、まあ、キャッチボールになるのですけれど、そういったディ
スカッションをお互いして、可能性を話していくことで、新しい疑問が生ま
れてきたり、とんでもない新しい考え方が出てきたり、そういったことが面
白いんじゃないかと思います。
・・・次回は再来週の金曜日の同じ時間に、小説家の川端裕人という方を
お招きして、川端さんは実はこのギャラリートークのために、恐竜と古生物
学者をテーマとした小説を書いています。こういう風にして小説を書いてい
くんだよという、皆さんにネタをばらします。
で、実際の小説は、その後ある雑誌にことになって、小説家、恐竜それか
ら文章などで恐竜たちの世界を創造してみるとか古生物学者とかサイエン
ティストとか考えてみるということに対してです。ぜひおいでになってみてく
ださい。ありがとうございました。
ここで時間が大幅に超えたのでギャラリートークは終了となりました。まだ
個別に質問する方もいましたし、所さんも持参した原画を見せたりしていま
した。
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