23 恐竜大図鑑 -古生物と恐竜-
2002年7月20日発行 デーヴィッド・ランバート他著、マーク・A・ノレル他監修
伊藤恵夫 日本語版監修 加藤雄志他訳
潟lコ・パブリッシング発行 376ページ 本体4,800円 ISBN4-87366-274-5
恐竜とその他の古生物に関する図解百科事典。原著はイギリスで2001年に出版されて
いる。その意味ではとても生きのいい本だ。恐竜と鳥類については92ページを割いている。
翼竜や海生爬虫類については別に30ページほど。また哺乳類とその祖先について84ペー
ジの構成。
私が感心したことがいくつかある。その一つは、分岐分類により古生物を紹介しているこ
とだ。たとえば、”魚類”を見よう。分岐分類では”魚類”と一くくりにすると、全ての脊椎動
物を含んでしまう。逆にいえばヤツメウナギからサケまでを”魚類”として一つにまとめるこ
とはできない。そのあたり、本書ではまず分岐図を掲げることにより読者にわかりやすく解
説している。もちろん共有派生形質を全て掲げることはできないが、もっとも特徴的な派生
形質とその分類群で代表的な生物のイラストにより理解を助けている。
その後に続く各ページでは、例えば”固い尾”という標題でテタヌラ類の解説がある。標題
ごとに見開き2ページの構成。ここではメガロサウルスの大きな復元図(CGで作成したよう
だ)、そこに特徴の解説が入る。またその学名、大きさ、食性、生息地などのデータ、他の
テタヌラ類としてエウストゥレプトポンディルスとアフロベナトルが小さめに紹介されている。
また、各ページ下端に帯年表がついていて、その生物が活躍した年代がわかるようになっ
ている。なお、伊藤恵夫氏によれば、本書の解説は原著に大幅に加筆修正したものだそ
うだ。
感心したことの2つ目とは、”魚類”から哺乳類まで古脊椎動物を一貫して分岐分類によ
るページ構成で解説していることである。これほど古脊椎動物全般についてわかりやすく
解説している図鑑はない。私もついつい恐竜以外の生物についてはおろそかになってしま
う。適当なリファレンスとしての機能も期待できる。また、読者は知らず知らずのうちに分岐
分類に慣れ親しむことができるだろう。
本書の最後100ページほどは、”リファレンス・セクション”になっている。地質年代表に始
まる”化石の年代”、先カンブリア時代から完新世まで、各年代を代表する化石や地球の
様相について知ることができる。また、”化石を探す”などの化石研究に関する各項目、バ
イオグラフィーや自然史博物館紹介などもある。
残念なことは、本文中”日本の恐竜関連博物館ガイド”、”用語解説”、”索引”の項で、
一部乱丁のようになっていること。これは出版段階で間に合わなかったのか、別刷りで修
正版がついている。
もうひとつ、恐竜に関していえば、分岐図はもう少し詳しいものをつけていただきたかった
(原著についていないにせよ)。後のページの項目にあるものの位置づけを分岐図で確認し
ようとしても、本書でははっきりしないものもある。たとえば、”大鎌トカゲ”の項目で解説さ
れているテリジノサウルスは、ティランノサウルスの次なので、コエルロサウルス類以降で
あることは注意してみればわかるが、以降のどこになるのかはっきりしない。
総合してみれば、本書は分岐分類により古脊椎動物全般について、オールカラー図版
で見たり読んだりできる点、日本語版での加筆も含め、最新情報によりまとめられている
点で、十分手元に置く価値がある。
24 恐竜大図鑑 よみがえる太古の世界
2002年7月22日発行 ポール・バレット著 ラウル・マーチン:イラスト
ケビン・パディアン監修 椿 正晴 訳
日本語版監修協力 林原自然史科学博物館 石垣 忍、鈴木 茂
日経ナショナル ジオグラフィック社 発行 192ページ 本体2,800円
ISBN4-931450-21-0
ほぼ同時期に同じ書名の本が発行された。こちらは恐竜のみの図鑑。まず最初の50ペ
ージほどが”第1部 恐竜の世界を知るために”と題し、恐竜の定義、年代、発見、復元、
恐竜の暮らしなど総合的に解説している。”第2部 恐竜たちのプロフィール”で、53タイプ
の恐竜を紹介している。もちろん分類順にだが、こちらは分岐分類を従来のリンネ式分類
にあてはめたものが使われている。
恐竜の紹介は、各分類群の代表的なものについて、1ページのものも、見開き2ページを
使うものもある。復元図と骨格写真、データファイル、化石の発見地域、生息年代それに
本文。生息年代は、三畳紀・ジュラ紀・白亜紀の百万年単位の表の中に赤帯で示されて
いる。
本書のポリシーと思われるが、恐竜イラストの色は全てセピア系に統一されている。化
石から色は復元できないからだろう。このあたり、物足りないと思う方と、科学的でいいと
いう方とで評価が分かれるだろう。データ的には2000年公開のディズニー映画”ダイノソー
”のシーンまで入っている。
さて、ここに紹介した2つの恐竜大図鑑、どちらをとればいいのだろう?それは、お好み
次第だと思う。古脊椎動物全般にわたって知りたければネコ・パブリッシング社のもの。
恐竜に絞れば日経ナショナル ジオグラフィック社のでも十分。ただし、編集方針は異なる
ので、両社ともまったく同じデータが載っているわけではない。ちなみに私は両方とも持って
います。