 HoxD-11遺伝子の発現から鳥類の第1指を確認 10.07.08
HoxD-11遺伝子の発現から鳥類の第1指を確認 10.07.08
        ユーレカアラート
        123か234か、鳥類と恐竜の指がそれぞれ第何指にあたるかは、恐竜と鳥類の
       系統を肯定・否定するそれぞれ根拠とされてきました。恐竜の前肢では第4指、
       第5指を失って3本指になったとされています。一方、鳥類の指は発生学上、第2、
       3、4指ですが、これがシフトして第1、2、3指になったものと言われています。
       このため、一時、フェデューシャなどは、恐竜と鳥類間の系統関係を否定する根
       拠として、ニワトリやダチョウの胚発生時の指のでき方などの論文配布をしていた
       こともあります。
      
       この論文の執筆者達は、これまでにマウスとニワトリの間で指の発現にかかわる
       Hox遺伝子を調べています。その結果、第1指ではHoxd13のみを発現し、他の全
       ての指ではHoxd12とHoxd13との両方を発現することが判明しています。この発現
       から、ニワトリの翼の最前側指は第1指であるとしています。
      
       さて、今回紹介された論文では、同じくHox遺伝子ですがHoxD-11遺伝子の発現
       を用いています。また、前論文ではマウスで比較していましたが、鳥類との系統関
       係はあまりに遠いので、現生で最も近縁といえるアリゲーターを用いています。
       マウスでは、第1指でのみHoxD-11遺伝子の発現がありません。また、鳥類では
       最前側指で同様に発現がありません。
       そして、現生で最も近縁のアリゲーターでも、第1指のみHoxD-11遺伝子の発現が
       ない事が判りました。
      
       発生上、第234指だったものが、HoxD遺伝子の発現がより後ろ側にシフトして
       (hometic frameshift)第123指になったということです。
      
       Vargas AO, Kohlsdorf T, Fallon JF, VandenBrooks J, Wagner GP (2008) 
       The Evolution of HoxD-11 Expression in the Bird Wing: Insights from Alligator
        mississippiensis
       PLoS ONE 3(10): e3325. doi:10.1371/journal.pone.0003325
       参考:VARGAS et al. 2005.
           Birds Have Dinosaur Wings: The Molecular Evidence
           JOURNAL OF EXPERIMENTAL ZOOLOGY (MOL DEV EVOL) 304B:86?90 (2005)
            論文
      
           おもしろ分子生物学 第49話 鳥の指と恐竜の指
           四肢の進化 -魚はどうやって手足を獲得し、陸にあがったか-
           Hox遺伝子群