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米ワイオミング州モリソン層(上部ジュラ系)産のAPATOSAURUS AJAX(竜脚類:
 ディプロドクス科)新標本 5.07.05
 A NEW SPECIMEN OF APATOSAURUS AJAX (SAUROPODA:DIPLODOCIDAE) FROM THE
 MORRISON FORMATION (UPPER JURASSIC) OF WYOMING, USA
 Paul Upchurch, Yukimitsu Tomida (冨田幸光) and Paul M.Barrett
 National Science Museum Monographs No.26 December, 2004

 国立科学博物館新館地下2階に常設展示されているアパトサウルスの記載です。
 1999年から、その解体研究が日英共同で始まり、2002年2月まで毎年行われまし
 た。それらに基づき、記載されたものです。

 アブストラクト(日本語)
  1993年,アメリカ・ワイオミング州サーモポリス近郊に露出するモリソン層
 (ジュラ紀後期,キンメリジアン〜チトニアン)から,アパトサウルスのほぼ完
 全な骨格が発掘された.この標本は東京の国立科学博物館が入手し,組み立て
 られて展示標本として一般に公開されている.この新しい標本を詳細に記載す
 ることにより,属の再定義および種レベルの分類に有効な,新たな解剖学的デ
 ータを得た.アパトサウルスに同定された標本を個体レベルで分岐解析した結
 果,これまでわかっていなかった系統関係が明らかとなり,あわせてA. ajax
 (模式種),A. excelsus, A.louisae, A.parvus (新組合せ)の4種が有効と認め
 られた.A.parvus は,ワイオミング州シープクリークのモリソン層から産し
 た 'Elosaurus' parvus の標本をもとにした種である.分岐解析の結果,アパ
 トサウルスの東京標本は A.ajax に同定される.これまではアパトサウルス属
 の模式種であるA.ajax についての詳しい記載がなかったため,本研究が本種
 についてももっとも詳しい記載論文ということになる.また,改定された属お
 よび種の定義によって,これまでアパトサウルスに同定されてきたいろいろな
 標本(オクラホマ州産の幼体標本を含む)の再評価が可能となった.

  論文の構成は、マーシュ以来のApatosaurusの記載の歴史から始まります。こ
 れを見ると、何と錯綜した各種の記載なんだろうと驚きます。'Brontosaurus'
 の問題も当然出てきます。かなり以前から記載された各種の有効性について疑
 問をもつ研究がある一方、有効とする見方もあります。
 アパトサウルスの属としての定義や種の定義にあやふやな点があること、また
 解剖学的詳細な情報が欠けていること、さらにそれらをもたらした各標本の解
 析が欠けていることを問題としています。

  次に東京標本について、その産地や保存状態等を論じています。科博に組み
 あがっている骨格には一部 Camarasaurus の骨が混じっているのだそうです。
 産地はワイオミング州サーモポリス近郊で、ワイオミングダイノソーセンター
 が発掘している現場から産出しました。この骨格の元となった化石が発掘され
 たとき、Camarasaurus 2個体やもしかしたら他のApatosaurus の骨と一緒に産
 出したようです(他のApatosaurus については強力な証拠はないとしています)。
 その結果、これらの骨が一部混じってしまったのです。逆にワイオミングダイ
 ノソーセンターに保管されている骨の中にも東京標本と同一個体に属する骨が
 あります。

  その後、骨格を構成する骨個々の記載が続きます。さらに系統解析の結果、
 アブストラクトにあるように4種が有効と認められています。FMNH P25112 に
 ついてはこれ以外の種とされるが種を定義しうる情報が不足のためApatosaurus
  sp. とし、新しい標本をまつとしています。