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中国遼寧下部白亜系義県層産出のベイピャオサウルスの尾端骨状
  構造 10.12.03
  Pygostyle-like Structure from Beipiaosaurus (Theropoda, Therizinosauroidea)
  from the Lower Cretaceous Yixian Formation of Liaoning, China
  徐星、CHENG Yennien、汪筱林、CHANG Chunhsiang
  ACTA GEOLOGIA SINICA(地質学報英文版) vol.77 No.3 pp.294-298

  ベイピャオサウルス(Beipiaosaurus)は、99年に報告されたテリジノサウ
 ルス類(Therizinosauroidea)で、この完模式標本により、テリジノサウルス
 類がコエルロサウルス類の中に位置づけられることがわかりました。
 ここではBeipiaosaurus inexpectus 完模式標本発掘地で再度発掘調査を
 行って発見された完模式標本の一部(IVPP V 11559) に基づき報告されて
 います。

 1個のスラブにほとんど完全な尾(30個の尾椎骨)と骨盤の一部が保存され
 ているものです。特に重要なのは尾椎端で、鳥類のほかオヴィラプトル類
 のノミンギア(Nomingia gobiensis ) のみにある尾端骨のような構造が認
 められます。Beipiaosaurus の尾端骨状構造はノミンギアの尾端骨と比較
 して、より共骨化が進みわずかに背側に湾曲した軸椎がある点で、より鳥
 類のもののようだとしています。
 なお、仙椎骨の最後部の骨が他の仙椎骨と癒合していないため、これは
 幼体であり、尾端骨状構造はBeipiaosaurus の初期個体発生段階から
 発達していたことを示唆するとしています。
 
 尾の先端まで長さ40-70mm、幅1.5mmほどの繊維状外皮構造がありま
 す。しかし、明確な羽軸がある尾羽は観察されません。

 尾端骨状構造がテリジノサウルス類のBeipiaosaurus に存在したことは
 一つの可能な説明として、これがテリジノサウルス類-オヴィラプトロサウ
 ルス類の共有派生形質であるとするものがあります。しかし、尾椎端まで
 完全に保存された標本は非常に少ないので、まだ先の研究に待たなけれ
 ばなりません。

 一方、鳥類では尾端骨は尾羽を動かすために使われています。また、ノミ
 ンギアの場合にも同様に推定されました。しかし、Beipiaosaurus では尾
 羽は観察されませんでした。繊維状構造は認められるので、保存上の問
 題ではなく、生きているときも尾羽はなかったと考えられます。
 Beipiaosaurus に原始的な繊維状構造しか認められないのに尾端骨状構
 造があることから、この構造は尾羽を動かすためでなく、他の未知のはた
 らきのために進化したことが強力に示唆されます。このことは、さらに、これ
 まで鳥類に顕著と考えられた特徴、たとえば鳥類のような肩帯や羽毛が、
 広範囲に分布し、元々の機能は鳥類とその飛行に関係ないというさらなる
 証拠をもたらすとし、かくのごとく前適応はコエルロサウルス類恐竜の進化
 において普遍的であったとしています。
Beipiaosaurus の尾端骨状構造写真 10.20.03
  中国恐竜網で写真付で報道しています。